「そこの……
ほれ、そこのあんた。
そうそう、あんたのことだよ。
あんたの、その青いコートすごくいいね。
うん、すごくいい。青をよくわかっているよ。
やっぱり青はきれいだね。一等美しい色だよね。
おや?あんたもしかして…いや言わなくても分かるよ。
あたしゃね、顔を見ればなんだって分かるんだ。
あんた、医者だね?医者だろう。うん医者だ。
やっぱりね、思ったとおりだ。うんうん。
顔に書いてあるもの、医者だって。
それでね、医者のあんたに
ちょいとお願いがあるのだけれどね。
あんたを素晴らしい医者と見込んでの話さ。
聞いてくれるかい?聞いてくれるよね、医者だもの。
あたしの後ろに隠れてるのは、うちの息子なんだがね。
生まれた時はそりゃあきれいな青色だったんだが、
最近だんだんと赤くなってきちまったのさ。
うちの息子が赤く染まっていくんだよ?
恐ろしいったらありゃしない!!
赤なんて、この世で一等汚らしい色さ!
あんたもそう思うだろう?そう思わないかい?
見とくれよ、今じゃこんな赤褐色になっちまって……。
これじゃあとなりのマーチンと見分けがつかなくなっちまう。
原因不明なんだよ、なんでこうなったのか分からないのさ。
お願いだ、青色の素晴らしさを知っているあんたなら
あたしのこの苦しみが手に取るようにわかるだろ?
どうかお願いだ、息子の身体を治しとくれ!」
「……すみません。
私はサササッカ虫専門の医者なので
ポカランクッチの病気はちょっと分かりません。」
「……そうかい。
なら、しかたないね。
でもね、あんた、言っておくけど、
あたしたちゃ、ポカランクッチじゃないよ。
外見は似ているが、心意気が全く違うんだよ。
やつらよりも青色を大事にしているのさ。
まあ、簡単に言えば、格が違うんだね。
……まあ、いいとしよう。
引き止めて悪かったね。
良い旅を。」