想像の力のこと

こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」で、もっとも衝撃だったのは「わかっているのは「死ねばいい」と 誰かに思われたということ」(こうの史代作「夕凪の街 桜の国」(株式会社双葉社)p.16、2コマ目から引用)という言葉だ。それまでそんな風に考えたこともなかったので、はじめはいまいちよくわからなかったが、じきにゾッとして、じんわり怒りが浮かんできた。

そこに生きる、ひとつひとつの命を何一つとして知らないくせに、軽はずみに「死ねばいい」と思う人、「死ねばいい」という行動をとったことにも気づかないで相手を傷つける人、そいういう人は、今も昔も、この国にも、どの世界にも、たくさん、いる。そうして、傷つけられた人だけが、延々と苦しんでいる。そんなのは、おかしいと素直に思う。

自分にはなんの関わりもないことだと全てを切り捨てたり、恐怖や怒りにまかせて考えるのをやめてしまえば、二の舞、三の舞である。どうか、自分自身がよいと思える方向に少しでも進むことができるよう、どこまでも丁寧に想像し、まわりの世界に関わり続けることを、あきらめないでほしい。