よしもとばななさんの「海のふた」を読みました。
読んでいるうちに、ふと、学生の頃見た、夜の海を思い出しました。
野外実習で訪れた海辺の街。フィールドワークを終えて、おいしいごはんもいただいて、とても満足な夜。「海」から遠い田舎まちで育ったわたしは、夜の海をまじまじと見たことがありませんでした。とたんに冒険心が湧き上がり、ともだちと一緒に、民宿の外に出てみることにしました。
「夜の海」という穏やかでロマンに溢れた響きとは裏腹に、目の前に現れた夜の海は、一面に黒くて、ざあざあと波が高く、しめったにおいがして、肌がざわざわとしました。なんだかとても怖くなり、早々に逃げ帰ったのを覚えています。
その、「なんだかとても怖い」という感覚は、真っ暗で正体はわからないけれど、自分よりはるかに大きな生きものの気配を感じておそれを抱くという感じに近いように思われました。
日々、自然から感じる、そうした感覚や感性を、大事に大事にしている人たちが、自分以外にもいる、ということに気付かせれくれるお話で、読んだ後に、とてもとても安心しました。