雑草を描くのは難しいのこと

私の趣味は、植物の絵を描くことです。

特に、「昔からその土地に根付いている植物」を「自然そのままに描く」ことを好んでいます。「昔からその土地に根付いている植物」とは、平たく言えば「雑草」などのことですが、この雑草を描くというのが、なかなか難しいのです。

意外なことに、雑草はいつでもそこらじゅうに生えているわけではありません。季節や土地の環境や状態によって生え方も生えている種類も変わります。田んぼや畑の近くなら当然生えているだろうと思いがちですが、むしろ雑草を目の敵にしているヒトビトの手により、全て引っこ抜かれたり、除草剤を撒かれて枯死したりすることも多いのです。雑草がぼうぼうに生えている場所を見つけたとしても、芝生や牧草などヒトに都合の良い種類が幅をきかせていたり、狙っていたものとは違う種類の雑草が占拠していたりします。

運良く狙っていた種類を見つけたとしても、全てがモデルさんになれるわけでもありません。植物画は、もともと図鑑に載せるために発展した絵ですから、その種の特徴を総合的に表しているものを選ばなければいけません。それは、図鑑掲載とは無縁の趣味であっても同じこと。生え方や最盛期かどうか、病気や虫食いがひどく状態が悪くないか、絵としての美しさや面白さが出せるかなどを判断した上で「描きたい!」と思うモデルに出会うまでがなかなか大変です。

さらに、「これぞ!」というこを見つけたとしても、悠長に絵が描ける環境かを見極める必要もあります。わたしの場合、基本的に植物は採取せず、その場でラフスケッチをし、詳細は資料用にバシャバシャ写真撮影しますので、そこが民家の庭先である場合は、きっぱりと諦めなければいけません。なぜなら、庭先に不審なおばさんが長時間座り込み、家の方向を熱心に撮影していたら通報されかねないからです。車の通る道路脇は危険ですし、人がよく通る道端も、具合が悪くなって座り込んでいると無用に心配されたり、野菜泥棒かと怪しまれたりする可能性も高く、難しいところです。

本日も、「春の野草を描くぞ!」と意気込んで、農道や民家の付近をうろうろすること40分。ついに、「これぞ!」というのを見つけられず、帰ってきました。とほほ。