ドン、と花火の音がして振り返ったが、何も見えなかった。
花火の会場からかなり離れているし、高い場所でもないから、見えないのは仕方がない。
再びドン、と花火の音がして振り返ったが、やはり何も見えなかった。なんとなく悔しい。
わざわざ外に出て、花火を見ようとする親子連れがいた。そうか、ここからでも見えるのか。それならば諦めずに立ち止まってみよう。
しばらく眺めていると、屋根の上からわずかながらに赤い光がキラめいていた。ドン、という音は後から聞こえてきた。
そうそう、そうだった。音は光よりも遅れてやってくるのだ。