セビトのこと

古い街セビトには、そこかしこに大きな樹が生えている。地中深くに根を張る大樹は水を組み上げる役割を果たしており、土地の高低に関わりなく水道がわりに利用することができた。そのためセビトでは昔から「大樹に包まれて暮らすと豊かになる」と言われ、皆こぞって樹の根の隙間に住居や店をつくってきた。樹を長生きさせるため、極力傷つけないよう配慮した結果、大通りまで根や枝葉が飛び出しているが、自らの生命を維持してくれている樹に合わせて暮らすことこそ、住民としての矜持なのである。

「世界地図の端から〜辺境の地セビト紀行〜(ブンジ・ゾ著)」