生きるためのつながりのこと

ヒトの体は重く、空も飛べない。耐水性もいまいちで、水中の酸素を取り入れることもできなければ、長時間泳ぎ続ける体力もない。動かなければ血が滞るし、動きすぎれば弱ってしまう。そもそも、他の生きものなどから栄養をとらなければ生きていけないし、寒すぎても暑すぎても死んでしまう。外部からの傷にも弱ければ、内部の傷にも弱い。残骸を分解し新たな命の糧にすることもできない。ヒトは、全く万能ではない。

さらにヒトは、ヒト同士で助け合わなければ生きることができない。他の生きものの命や力を借りたとしても、ヒトという個体がたったひとりで、作物をつくり育て料理し食べ、糸をつむぎ機織り編み縫い衣服にし、材料を用意し快適な住まいや道具をつくり維持修繕し続けることは難しい。そもそもひとりでは、次の命をつくることもできないし、心踊る音楽や芸術を生み出し披露することもできず、物語も生まれない。ヒトは、たったひとりでは何もできない。

ヒトは、その弱さゆえにたまたま生きながらえただけなのに、強くて優秀だから生き残ったと勘違いしておごり高ぶったり、他者を攻撃したりする。また、まわりに生かされていることに気づかず、無関心のままでいることもある。

ないないづくしのヒトだけれど、たくさんの命のつながりでようやく自分が生きていると考えると、この世ってすげー面白いなとシンプルに思います。