旅する小石のこと

左の靴底からカツカツと音がする。どうやら、靴の溝に小石がはさまっているようだ。

歩きながら、階段を降りながら、駅のホームで電車を待ちながら、ねじねじと地面に靴底を擦り付けて、小石を追い出そうとするも、うまくいかない。ついには電車がきて、そのまま乗車してしまった。

昔、飛行機に乗った時、他の土地に種など持ち込まぬよう、また、持ち帰らぬよう、靴底を消毒したことを思い出す。なるほどこのように、知らぬ間に小石や種を運んでいるのやもしれぬ。

電車から降りた土地で、またぐりぐりと靴底を擦り付けると、小石は簡単にピンと外れて、砂利の多い土地に紛れ込んだ。

自分で外しておきながら、小石を知らぬ土地に飛ばしてしまったことに少し焦ったが、小石の気持ちは小石にしか分からない。