後からしるのこと

名取市に行ったきっかけは、閖上地区の語り部さんのお話でした。宮城に行ったなら、ぜひ行かねばと思っていたのです。

訪れたのは、5年くらい前の冬でした。美田園駅を降りると、細かな雪がびゅうびゅうと降り積もっています。グーグルマップを頼りに閖上地区を目指して進んでいると、曇り空の下にただただ白く広い場所が現れました。そして、何台も何台も連なる大きな黒いダンプカーたち。白と黒の世界と、排気ガスのにおいのなかをひたすら歩き、ようやく閖上地区に着く頃にはすっかり疲れてしまって、とくに何かを見る前に、名取駅の方向へ引き換えしてしまったのです。

大きな道路沿いに歩くて行くうちに雪もおさまり、日差しが出てきました。ちょうどお寺の前を通りかかると、雲の切れ間からお堂に向かって太陽の光が差しており、それが空からの階段のように見えて、なんだか救われたような気持ちになったのを覚えています。

そして、だんだんと元気を取り戻したわたしの目に入ったのは、水に浮かぶセリたち。きれいだなー、すてきだなー、セリってこんな風に育てるんだーと通り過ぎました。そう、何も知らずに。

地元にもどってから、名取市は「せり」の名産地であり、「せり鍋」は根っこまで食べるめちゃくちゃうまい食べ物だということをテレビでようやく知ったのです。(遅い)とても後悔しましたとも。なぜ、わたしはせり鍋を食べて帰ってこなかったのかと。

これはもう一度行くしかありますまい。超うまい「せり鍋」を、本場で食べるために!