フンの不思議のこと

玄関先に鳥のフンが落ちている。

都会で見かけるびしゃりと広がる白いフンとは違う、種混じりのもりもりしたフンだ。大きさと落ちている場所、よく見かける顔ぶれを鑑み、「ヒヨドリだ!」と決めつける。

不思議なのは、しばらく放置していても、さして気にならないこと。同じ場所でも、通りすがりのネコのフンには匂いで気づくのに、ヒヨドリのフンは、目に見えていても匂わない。

そう言えば、この世に無数に存在する生きものたちも、日々食べてはフンをしているが、野鳥やトカゲやアリやらのフンが臭くて大変だなんて話は聞いたことがない。

ヒトや、ヒトに飼われる生きもののフンは臭いと感じるのにな。

とある樹の葉が揺れる時のこと

突然頭上でさわさわと音がした。

顔を上げると、とある樹の葉だけが風に揺れている。

強い風で一帯の木が揺らぐのとは違い、局所的にざわざわと葉を揺らしているときは、何かその樹に呼ばれているのかしらと思う。

野放しへの憧れのこと

「英国貴族、領地を野生に戻す 野生動物の復活と自然の大遷移」(イザベラ・トゥリー著、三木直子訳、築地書館)を本屋で見かけ、手にとってパラパラとめくり、たまらず速攻でレジに向かい購入してから1年。

広大で均一な農地が、ページをめくるたびにどんどん複雑で色鮮やかに変わる様が、まるで大掛かりな仕掛け絵本を開いているかのようにワクワクした。

自由にできる土地なんてひとかけらもないけれど、つい夢想してしまう。わたしが住む土地で、少しでも野放しにできる土地があればなあ。のこと

地元の和菓子屋さんめぐりのこと

近所の和菓子屋めぐりが楽しみになりつつあります。

今まで、ちょいと良いお菓子を買いに遠出をしたり、デパ地下に立ち寄ったりしていたので、近所のお菓子屋さんにはあまり通っていませんでした。

人出を避けるため、都会でウロウロするのも憚られるなか、ならば地元で美味しいものを見つけようと思ったのです。

地元菓子店を巡ってみて、その多様さに驚き、嬉しいことにほっぺもいくつか落ちました。

同じ菓子でもあの店とこの店と、さらにあちらの店ではてんで違う。そんなところがいとおかし、であります。

気持ちの一歩のこと

水源と畑と林があれば、とても生きやすいのではないかと、数年前から思っている。

通りすがりに「売地」の看板を見つけるたびに自分が住まい、畑と林をつくる妄想をするようになった。

現実世界で全く進展はないものの、心の中だけ、少しずつ進んでいるような気がする。

ミカンの声が聞こえた気がするのこと

ふと見れば、若木にたった一つ育ったミカンが、良い色合いになっています。

とり忘れを防ぐため、早めに収穫し、家で熟すのを待とうと考えました。

もぎとろうと手を伸ばし、またふと、「ミカンさんにも意見を聞こう」と思い立ちました。とは言え、本当に会話できるなんて微塵も思わず、自分の脳内に並べた都合の良い言葉を返事として、ミカンを収穫するための大義名分を得ようと思ったのです。

遊び半分で「もう収穫してもいいですか?」と、ミカンの木に聞いてみました。

ところが、脳裏に浮かんだのは、「だめです」という言葉。焦りました。いやいや、おかしい。予定と違う。もっと都合の良い言葉を思い浮かべてさっさと収穫しようと、もう一度ミカンの実を見ると、今度は「もうちょっと待って」という言葉か浮かびました。ええー、そんなあ!

自己完結かつ自己満足にミカンを収穫しようと思ったのに、なぜか自分の思考がままならなく、面白い体験でした。

新たな良さに気づくのこと

そこにスーパーがあることは知っていた。この十年で一度か二度は入ったことがある。古びた建物の中に商品がぎゅうぎゅうに詰め込まており、取り立てて安いわけでもなく、お客さんも少ない。わざわざ通うまでもないという印象だった。

ほんの一年ほど前までは、ヒトがたくさん押し寄せる場所こそ行く価値があり、行列や渋滞は面倒である半面、それができるほど人気であるという証拠でもあったので、わざわざ混み合う場所に訪れて、その場にいる自分に酔いしれることも多かった。

生活必需品を購入するスーパーでさえ、きらびやかで美しく、ヒトが押し寄せる大規模施設の商品の方が素晴らしいと思っていたときもあった。

でも、いまは、ヒトとの接触を極力減らす方が良いという時期。生活必需品を買うためだけに、混み合う大規模施設に行くなんてとてもリスキーだ。

それならばと、久しぶりにそのスーパーに立ち寄ってみて、驚いた。野菜も魚も新鮮で品質が良く、お惣菜まで美味しいのである!今までのところでは、肉がない粉だけの唐揚げとか、やる気のない助六とかの方が主流になっていて、スーパーのお惣菜で美味しくないのは当たり前と思っていたのに!

ちゃんと真っ当なものを売ってくれているのはどちらか、この機会にとてもよく知ることができた。

苦もなく楽しくできること

苦もなく楽しくできることが才能なのだとしたら、近年新たに発見し、ようやく定着してきたのは、衣服に開いた穴を糸で塞ぐこと。

編み物は、未だに力が入りすぎるし、編み棒から外れただけでオロオロとうろたえてしまうのに、穴かがりは、気を抜いておしゃべりまでできるんだぜ。

糸と糸を組み合わせるのは同じだけれど、縦糸に横糸を通す作業が好きなのかもしれない。

カエルを起こすのこと

じゃがいもを植えようと土をいじっていたら、そんなに深くもないところから、土だらけのカエルが飛び出した。

明らかに眠そうで、寒そう。ひょこひょこ手足を動かして、ちょっとした土のくぼみへ移動し、丸まるように縮こまってしまった。

本当にごめんなさい。