雲隠れのこと

ついさっき見上げた月が、今はもう雲に隠れている、という言葉は、移ろいやすい心なども表すが、浮かぶ光景自体はゆったりと優雅なものであると思っていた。

しかし、実際に、先ほど見上げたばかりの月が数分後に見えなくなっていると、少なからず動揺する、ということが分かった。すだれ越しで見づらかったということもあるが、そこにあるはずのものがないという驚きは、見間違いだろうという気持ちと合わさり、無様に何度も角度を変えて夜空を確認するわたしを生んだ。全然、雅じゃない。

雲隠れの歌に込めた想いは、わたしが思っていたものよりも、愕然という気持ちに近いのかもしれない。