アリとクモのこと

欄干を走る大きなアリが視界に入り、何気なく目を向けると、アリも立ち止まってこちらに向き直り、身構えてきた。

このとき少し違和感を覚えた。今までアリが、わたしの動きに反応してくれたことはあっただろうかと。

気のせいかな?と近づくと、後ずさるものの逃げるわけでもなく、こちらの様子を窺っている。念のため、あちこちから観察してみると、向こうもちゃんと顔を動かし、わたしを正面からとらえようとしていた。

自分の存在がアリに認識されたのは生まれて初めてだ。このことに衝撃を受け、めちゃくちゃ嬉しくなったが、なんてことはない。奇妙なアリの正体は、アリにそっくりなアリグモだった。

昔からアリの行列を見るのが好きだった。あらゆるものを片付けてくれるアリのことをスゴイ!と感じていた。しかし、アリをじっと見つめても、手のひらの上を歩かせても、アリがわたしを認識したと感じたことはなかった。それが今日、初めてアリがわたしの方を向いてくれたのだ!思い人が振り向いてくれたようなドキドキ感があった。(結果的には勘違いだったが。)

とすると、アリとほぼ変わらぬサイズで、自分よりはるかに巨大な動物まで認識し、臆さないクモのすごさよ。

やっぱりクモちゃんのすごさはすごすぎますな。