満月だよの声のこと

すっかり暗い帰り道、真黒の空に奇妙な白がぽわりと浮かんでいる。

小さな白い雲かしら。いやいや、こんなに暗いなか、ひとつだけ白く見えるなんておかしい。

重たい雲の向こうに月があるのだろうと、しばらくじっと見つめていると、あちこちが白くなりだした。月だとすれば、かなり強い光だ。

頭上から「今夜は満月だよ」と言われた気がして、それなら月の暦でも調べようかと思った途端、雲の切れ間から黄色いまんまるのお月さんが顔を出された。

あれまあ、ほんとに満月だべ。と、たまげているうちに、分厚い雲に覆われて、月の影すら見えなくなった。

不思議なこともあるもんだ。

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