おカイコハウジング考のこと

おカイコ様をお育てするとき、まゆをつくる場所づくりに毎度悩みます。

はじめは養蚕業の回転まぶしを参考に、ダンボールでマンションタイプのまぶしをつくりました。おカイコ様が各部屋を内見する様子は微笑ましく、部屋の成約率も高いようでしたが、人気の物件を巡りへろへろになるまで争う方々や、小さな部屋をふたりでシェアしてしまう方もおみえになり、成虫になる前に命を落とす方も多いように感じました。

また、頑なにマンション入居を拒む方々も一定数おみえになり、新聞紙の隙間でまゆをつくられる方もみえました。そうした方向けにキッチンペーパーの芯でつくった個別住宅をご案内しましたが、はじめから気に入って入居していただける方は稀で、大概はあちこち迷い歩いたあげく、妥協の上で入居される方がほとんどでした。

業としてまゆをとる養蚕ならいざ知らず、成虫となり繁殖するところまで見届けたい場合、まゆづくりのための無駄なストレスはなるべく避けたいと思うもの。

このままではいけないと思い養蚕業の歴史を調べてみると、回転まぶしが主流となる以前は、わらを編んでつくる「わらまぶし」などにはいってまゆを作られていたとのことでした。わらで作ったハウジングならば、おカイコ様も喜んでご入居いただけるかもしれません。

ただ無農薬のわらを手に入れるツテがなく、編み方も分かりません。苦肉の策で画用紙を藁状に折りたたみ、ネットの写真を参考に適当に編み込んで作成してみましたが、出来栄えもひどく、おカイコ様はおひとりもご利用になりませんでした。

今年は、おカイコ様に負担のかからない素敵なハウジングをご提供したいと考え、クワの枝を複雑に組んだワイルド住宅を作成しました。自然素材をふんだんに使った、ジャングルジム的な仕様です。

今度こそ、気に入っていただけるといいな……。